一人だと思っているのは本人だけです
*あらすじ
→ルートにかまってもらえなかったギルにーちゃんが、フランス経由で親分のところに押しかけてきました。(あらすじでもなんでもねぇ)
「ってわけでさぁ、ひどいと思わねぇかトーニョ。いくらちょっと国内行事で忙しいからって、俺様が話しかけたのに「ああ」とか「そうか」だけなんだぜルッツのやつ!」
ここで、空気を読まない(読めないではない、読まないのだと一部でささやかれている)某国であれば、「彼は大抵忙しくても忙しくなくてもそういう返事じゃないかい?」と、ド・ストレートに言ってくれただろうけれども。
しかして、トマト大好き太陽の国の化身であり、結構色々さばーっとしている自称親分ことアントーニョは、悪友歴が長いこともあり、常日頃「一人楽しすぎるぜー」とケセセセ笑っている男の扱いがそれなりにうまかった。
つまりは。
「そーかそーか、そら難儀やったなぁ」
目は、あくまで今日収穫したトマトの選別(輸出のためのトマトは青いものでないといけない。けれどもこれは後でロヴィーノのところに持って行ってやるトマトだ。真っ赤に熟れてそれでいておいしそうなものを選ばなければ)のために動いている。
先ほどまで、目の前でのの字を書いている不憫...もといギルベルトと引っ張り込んでシエスタをきっちりととっていたから結構気力は充実しているし、この分だと予定よりも早く南イタリアへ向かえそうだ。
「しかも、夕食に、あのルッツが、あのルッツが、ビール飲まなかったんだぜ!俺たちの血はビールが流れてるってのに...トマトばっかり食いやがってぇえええええええ!!!!!」
「え、なんやんトマトうまいでー?」
そんなに元気ないんやったら、親分おまじないしたろかー?ふそそそそそそそそー。
とっときのおまじないをしてやったというのに、更に落ち込んでしまったようだ。
銀色の頭のてっぺんまで見える...ということは、つまりそれだけ頭の位置が低いわけで。
俺様かっこいいぜーとか常日頃言っていて、見た目やたらに自信満々のように見せかけて、妙に寂しがり屋なこの友人は、なんだかんだとアントーニョも憎くは思っていない。
まぁ...ただしなんというか、弄ってナンボというか...いじりがいがありすぎてアレなだけで、別に他の国だって同じだろう。つまり憎めない男なのである。
「ほな、ギルも一緒にロヴィのとこいこか?ビールやなくてワインやと思うけど」
「...ビールがいい」
つまり、この友人が何を死に来たかと言えば...やけ酒に付き合えとつまりそれである。
すでに、フランシスのところは寄って来たのだろうが...確か、タイミングが悪いことに今週はカナダに遊びに行くと言っていたはずだ。そのノリと、引くに引けなくなってスペインまでやってきたのだろう。...なんとなく、あの堅物で几帳面、ついでに世話焼きで心配性の弟が今頃あのぶっとい声でこの目の前で小鳥を弄っていじけている男を探しているのだろうとは想像に易い。
ついでに、きっとさっさと仕事を片付けて今頃隣国フランスに兄を追って乗り込んでいるころだろうか。
で、頼みのフランシスが留守なので、おそらくは今頃なんだかんだと仲の良いフェリシアーノのところに相談と称して乗り込んでいるころだろう。
あそこは、意外とルートヴィッヒが世話を焼いている一方的な関係に見せかけて、うまくバランスをとってやっているのだとアントーニョは思っている。まぁ、思っているだけだが。
でもまぁ。
その予想が当たっているとなれば、つまり先ほどのアントーニョの案は採用されてしかるべきだろう。
アントーニョはこれからロヴィーノと一緒にご飯を食べる予定を崩すつもりはないし、かといってこの愛すべき悪友を、ぽいっと傷心のまま、所謂『一人寂しい』状態で放り出すつもりもない。
この場合、一石二鳥...否、三鳥で行かせてもらうのがいいだろう。
そうときまれば、少しは浮上してもらわねば。
「なーなーギル、ロヴィのとこだってビールもあるやん。な、親分ロヴィとぎょうさんうまいつまみ作ったるから、な?一緒にいこ?な?」
「...び、ビール出るなら」
ちょっと、元気が出たようだ。
肩に小鳥を載せたまま、ちょこっと赤い目をのぞかせたギルベルトに、アントーニョは白い歯をみせてにかっと笑ってやる。
すでに、俺様かっこいいから仕方ねぇなぁとかちょっと復活気味である。
基本的に、ギルベルトは一人でいることが好きではない(というか、嫌)なので、誘って付いてこないことはまれである(弟の先約がない限りは)。
それを知っているので、今現在は国を引退してフリーの時間が多い彼だけれども、実は結構家を空けていることが多い。皆、それぞれに誘ったりしているからだ。
...まぁ、それを本人が気づいているかは別として。
さて。
「ギルもお土産持つの手伝って―な。ぎょーさんトマト持ってくでー」
選別を終えたトマトの箱を持ち上げて(ちゃんと、一つ一つカバーは掛けている。空輸でつぶれてしまっては、あの可愛い弟分のほっぺたがそれこそトマト並みにぷっくぷくだ)、車の後ろに積み込んで声をかければ、おうー。と素直な返事。
なんだかんだ、頼むと断らない、世話焼きなところは弟そっくり...否、弟が似たのか。
(ロヴィにフェリちゃんと連絡取ってもらうとして...ほな、フィレンツェあたりで落ちあおかー)
確認を取らずとも八割方現在のルッツの居場所はヴェネツィアあたりだろう。
(ま、外れやったら外れやったで、両手に花とギルちゃんで親分うっきうきやし)
すでに、アントーニョの思考はこの後の夕飯に占められている。
具体的にはトマトとかトマトとかトマトとかロヴィーノとか。
残りの一割くらいで助手席のギルベルトを確認して、車にエンジンをかける。
隣で、おそらくはこれから出るビール(イタリアにだって、地ビールはある)に想いを馳せているのだろう。彼が常日頃自分の血液をビールだと言いきっているのは伊達ではない。
(ほな、いきますかー)
滑り出した車は、空港へ向かって。
今日は、おそらくにぎやかな夕飯になるだろう。
え、なにこのエセプロ。
ってか、エセ親分。
いや、私めちゃくちゃ悪友トリオ大好きなんですよ!
悪友トリオ+眉毛でファイナルアンサー!え、親分眉毛と仲悪いって?
き に し な い!!!!!
すべては妄想で補完が二次元クオリティ!(こら)
ぷーちゃんと眉毛は、属性が似ているのもあるかもしれませんがどっちも大好きです。
2010.8.8up