当然のようにユーリが♀設定です。
苦手な方は回避プリーズ。
そして映画ネタです。ネタバレイヤーの方はバックしてください。
そして、かいてる本人一度しか見ていないので、おそらくはいろいろと勘違いしているかもしれませんがまぁ・・・ご寛恕くださいませませ。
そして、当のユーリは出ていません。




「・・・どうして!僕が、ユーリと同じ部屋何ですかっ!!彼女は女子でしょう。シャスティル先輩とかヒスカ先輩とか・・・とにかくどうして僕と同室なんですか」
ナイレンは、とりあえず書類を眺めながらボリボリと頭を掻き、つい先日帝都から派遣されてきた新人二人のうち、問題児ではないほうの息巻いている様子をとりあえずちらりと見やった。
まぁ、これでも彼はだいぶがんばった方だろう。そもそもこの主張は、二人がここシゾンタニアに到着してすぐもなされているのだ。
一週間、とりあえず賭には勝ったな、と心の中だけで配当金の算段をつけつつ、とりあえず実のところかわいそうな被害者へと、きちんと体を向けて向き合った。
「・・・仕方ないだろ、部屋がない。そしてうちにいた女子は元々シャスティルとヒスカの二人だけで、ついでにいえば伝令ミスで俺たちは男二人って聞いていた。でもって、現在のあいている部屋はひとつ。・・・ヒスカとシャスティルは相部屋だし、だいたいベッドは二つ、そこにあいつ押し込むわけにもいかんだろうが」
これも、ついでにいえば最初に説明した事柄でもあった。
騎士団において、女性騎士がいないわけではない。
体質の問題なのか、女性の方がよりブラスティアになじみやすく、故に細かな制御の必要になるような補助魔法などはむしろ、トップクラスの術師は女性の占める割合が高い。
けれども、所詮騎士団というのはどうも男社会という一面があり、そもそも体格としてやはりどうしても劣る部分のある女性というのは結果として占める割合は男のそれと比べると低くなってくるわけで。
ついでにいえば、女性にしては背が高く、ついでに口も悪いユーリのことは、伝令のいたずらか勘違いか、こちらには確かに男が二人、と伝わっていたのだ。丁度、部屋が一つ空きができていた故派遣された二人を、そのままその部屋にあてがうのは何ら不思議なことでもない。辺境ともなれば、騎士団の物資も施設も十分なわけでもないのだ。
だが、ふたを開けてみれば派遣されてきたのは、王子様のような容貌をした少しばかりかたくなすぎる青さを持つフレンと、そして黙っていれば間違いなく一級品の、恐ろしく綺麗な顔をした、それでいて口を開いてしまうと誰かしらが頭を抱える羽目になる問題児、ユーリ。・・・ただし、前者はともかく後者は間違いなく女であった。・・・何せ、ヒスカどころかシャスティルよりも壮絶に立派なものを持ち合わせているのだから。
まだ十代の終わりだというのに、何とも将来の怖い嬢ちゃんだなぁという印象をナイレンは持ったものだが、いかにも破天荒なユーリの性格は、どうやらこの折り目正しいフレンにはいろいろとぶつかるところもあるらしい。・・・どちらが悪いわけでもない、お互いのいいところも悪いところも認められるようになれば、もう一皮むけるだろうなというのがナイレンの印象であったが、まぁ渦中の青春まっただ中の本人たちにとってみればそんな簡単に落ち着くものでもないのだろう。
「・・・んで、今日はなにがあったんだ?」
この間は、酒場で乱闘騒ぎ、その前はセクハラしてきた男を投げ飛ばし、ついでにその前は結界の外に出てしまったボールを追いかけようと走り出した子供を守るために結果として門を微妙に破壊した。
双子のシャスティルとヒスカが担当していることもあるし、ついでに相部屋で二人だけの新人ということもあるこの二人が同じ場所に居合わせるというのは珍しいこともでなんでもなく、ついでにまぁユーリのその破天荒の余波の直撃を受けているのはたいていフレンなのでは、ある。
まぁ、本当にイヤならばいっさい関わらない用にすればいいのだ。人間、最大の好意の反対にいるのは無関心、いないものとして扱えばそれほど精神をすり減らさずにすむ。
けれども、フレンのこれは・・・まぁ、子犬のじゃれあいのようなものだ。なんだかんだ、ユーリの世話を焼いてしまうフレンを見込んでの編成でもあるのだが、まぁ彼だって若いのだから不満だって多いだろう。
それを聞くのが上司のつとめであり、ナイレンの仕事の一つでもあり、そしてついでにいえば楽しみの一つでもある。
若者をからかうのは、たいていの場合年寄りの特権である故に。
「・・・あいつには女の自覚がないんです!風呂から上がれば碌に髪も拭かず、碌に着替えもせずにそのままベッドに潜り込むし、朝だって・・・その、堂々と人の前で着替え始めるんです。「別に見られても構わねーし」とか・・・そんな問題じゃないっ・・・って、何を笑っているんですか、隊長!!」
途中までは、笑ってはまずいと思ってこらえていたのだが、真ん中あたりからもう既に腹筋が崩壊していて無理だった。
何というか、想像以上にフレンはかわいそうな状況に置かれていたらしい。ユーリとくれば、自分の容姿などあまり興味もない様子でとにかく普段から無頓着、簡単に顔にも傷を作ってはヒスカとシャスティルの二人にため息をつかれているけれども、ここまでとは。
「一昨日に、さすがにきつめに注意したんです。そうしたら今度は、犬舎で寝るようになってしまって・・・」
「・・・あー・・・道理で、最近ランバードんところに毛布が増えてると思えば、犯人はあいつか」
たまにラピードがあぎあぎとお気に入りにかんでいるのでまぁいいかと思っていたのだが、どうやらうちのお姫さんが寝泊まり用に持ち込んだものであったらしい。
しかしやはり、フレンの無自覚にも困ったものだ。
ユーリは自分の性格を直せない代わりに、妥協案として犬舎で寝ることを選んだのだ。
なのに、それはそれでいらいらしているのだから本当にほほえましいことこの上ない。
まぁ、それを本人にいってやるといよいよ本気ですねるだろうから言わないでおくが。
その代わり、ナイレンは口元に笑みを履きながら、ちょっとしたいたずら心で言ってみた。
「なら、ユルギスとか、ほかの奴らと部屋変わってもらうか?まぁ、あのお姫さんも先輩相手なら目の前で着替えたりもせんだろうし」
事実、そうだろう。ナイレンにはその確信がある。
フレンがユーリにのみ特に口うるさいのと同じように、あの破天荒で向こう見ずの自由人に見えるユーリだって、あまりに遠慮のなさすぎるそれはおそらくフレンの前だからやっているのだ。・・・多分。
前者は確定だが、後者は若干、たとえ副隊長と同じ部屋にしても平気で着替えるかもしれないとかそんな一抹の不安がよぎらないでもないが。
とりあえず、そう告げたときのフレンの表情は、たとえるならば・・・口にした、カレーだと思っていたものが実はすさまじく甘苦い謎の物体だったとか、そんな、自分でもよくわかっていないショックで変に硬直してしまったとか、そんなもので。
おそらく現時点でもどうして自分が固まっているのかわかっていないのだろう。自覚したらしたで大変おもしろそ・・・面倒なことになりそうだが。
「・・・おら、どうしたんだ?」
「・・・い、いえ。そんな、ただでさえ忙しい先輩方の心労を増やすわけにはいきません」
どうやら、脳内処理が終わったらしいフレンのその、きまじめ臭いいいわけに、やはりほほえましくてナイレンはからかうようなものではなく、慈しむような笑みを浮かべた。
こういう後ろがいるから、先に生まれて体を張る価値があるというものだ。・・・青い方が、いっそ好ましいと常々ナイレンは思っている口だったから。
「じゃあ、そのままでいいんだな?」
「・・・はい」
最初に部屋に入ってきたときの勢いはどこに行ったのか、部屋を変えてほしいという一つの主張をいつの間にか自分で撤回する羽目になったフレンはやはり、どこか苦虫をかみつぶしたかのような表情で。
失礼しますといって出ていった彼に、たっぷりと10数えてから、今どこそナイレンは、遠慮なしに吹き出して爆笑した。
目に涙さえ浮かべて笑う今の姿を見たら、間違いなくフレンがへそを曲げていたに違いない。
何とも愛しくも愛らしい若者たちの青春劇に、久方ぶりに腹の底から笑わせてもらった気分のナイレンは、とりあえず目の端の涙を拭って息をついたのであった。



青春模様、そのいち



こんなカンジで楽しくやっていきたいです。
2009/10/18