「例えば、キャストをシャッフルなんていかがです?」
ぽん、と手を叩いたエステルの、いきなりの提案に皆目を瞬かせた。
現在は、食事の準備中。
すでにユーリによって完成された間違いのない料理(この対として、間違いのある料理もある。具体的には、製作者がフレンで有ると、二分の一の確率くらいで起こる)を、皆で仲良く食卓に並べているところで(現在は、海上のため、フィエルティア号の船室のテーブルだ)いきなりの提案に、さすがにジュディスもあら?と首をかしげている。
「いかがなさいました?エステリーゼ様」
白いエプロンのまぶしい(彼は今回調理には参加してない。盛り付けを任されたので、つけているだけである。念のため)フレンに、話を聞いてもらえる流れを作れたエステルが、にっこりと鼻のように笑った。
嬢ちゃんが笑うと、本当場が華やぐわぁなんてのほほんとジュディスに入れてもらったお茶をすするレイヴンに、ちょっとぉ!運ぶの手伝ってよ!と騒ぐカロルとパティ。
リタは、レイヴンと同様当然のようにすでに食卓について茶をすすりながら本を読んでいるが、誰にも突っ込まれないのは、万が一癇癪をおこしたリタによって、ユーリの愛情料理が被害を受けるのを避けるためだろう。
「もし、もしですよ?私たちの立場が入れ替わっていたら、どんな風な出会いになったのかと思ったんです。...実は、私たちの旅を物語にしていたのですけれども、その中でふと思ったんです」
「ああ、エステル最近よく文章書いてたもんな。...おし、その話は食事しながらにしようぜ?冷めちまう」
エステルのきらきらした視線を、ウインク一つで受け止めた我らの兄貴ことユーリ・ローウェル二十一歳かっこ独身かっことじは、手に抱えた特製マーボーカレーをどんとテーブルに置くと、心得たようにご飯をよそった器を手渡してきたフレンから器を受け取り、カレーをよそい始める。
...無駄に、何の会話もなしにそれをやってのけるあたり、最早熟年夫婦の乗りだとかそんな突っ込みは斜め四十五度あたりでお願いいたします。
「ユーリのマーボーカレー、僕大好き!」
「うちもなのじゃ!」
「おいしいわよねえ」
「男の人の料理上手なんて、ほんと焼けちゃうわ」
付け合わせのマカロニサラダもなんとも食欲をそそる逸品だ。
和気あいあいとした家族の団欒の食卓で、いただきますと皆で手を合わせ、そうしてからユーリが改めてエステルに話を振る。v
「で?どんな話を考えてるんだ?」
「今日もおいしいですぅ...あ、はい!そうなんです。私たちの立場が、もし入れ替わったら面白いのではないかな。と思っていまして」
我らが兄貴は気遣いも気配りも今日も完ぺきだ。
話したくてうずうずしていたお姫様に、ちゃんとタイミング良く話を振ってくれる。
エステルはきちんと行儀よくスプーンをいったん皿において、そうしてから楽しそうに説明を始め。
珍しく、それに皆が乗る形となった。
「確かに、純粋に誰かの立場になったら、ちょっと体験してみたいかもしれないわね」
「うちは、フレンになりたいのじゃ!そうしたら、ユーリの親友の座をゲット!なのじゃ」
「あ、あたしは別に全然そんなのやってみたくなんかないわよ」
想像するだけであれば、楽しいものだ。実際には、皆それぞれにその立場で苦しいものも背負っているけれども。
ワイワイとにぎやかになった食卓に、ふと、具体的に言えば某陰険眼鏡様もしくは死霊使い様のような声が響いた。
「なるほどなるほど、ではその願い、おいしいマーボーカレーのお礼にこの悪の譜術使いがかなえて差し上げましょう☆」
「って、誰だお前なんで勝手にマーボーカレー食ってんだよ!」
何故かいきなり、非常に不親切なことに説明など一切なしに(管理人の都合とか言わない...言わないですよ、ええ)その場に座っていた心底不審な男は、にっこりと笑いながらどこか底冷えのする何かが漂っている気がしてならない。
至極まっとうなユーリの突っ込みにもめげないあたり、とりあえず笑顔は鉄仮面と理解したほうがよさそうだ。
ステッキの代わりにスプーン、そして反対の手にはマーボーカレーの皿を抱えた、いかにも悪そうな顔の、年齢不詳の男は、アシュルクアシュルクヴェイティトポンっ☆などと、うすら寒い呪文を唱えてスプーンを振った。
「シャッフル世界へようこそー」
それが、皆が『現在』において最後に聞いた言葉となった。
特別出演の某方によって、突如、面々はエステルの妄想世界へと
放り込まれることになったらしい。
はい、続きません(笑)
続けるとなると、非常に長い話になるので、ジャンクゆきです。
ジャンクがジャンクたるゆえんは、自分の好き勝手ができるところだと信じてやまない私はそろそろ吊ってきた方がよいですね(笑)
ジェイドは友情(?)出演でございます。
以前に書きかけで放置していたのをサルベージしてみました。
とはいえ、ここで切るとさすがにアレなので、雰囲気だけ書き出してみました。
<シーン1>
「ぼ、僕がゆ、ユーリ?...うう、き、緊張するなぁ」
「はは、頑張れよカロル」
「う、うん。ユーリ」
「おら、そろそろテッドが飛んでくっぞ。しっかりな」
「うん!...でもさぁ、ユーリ」
「ん?なんだ」
「なんか、あまりユーリの立ち位置変わってないように思えるの、僕だけかな...」
「気のせいだろ」
(カロル=ユーリ、ユーリ=ラピード)
<シーン2>
「ちょ!ジュディス、ジュディス!にこやかにつぼを脳天めがけて振り下ろすのやめてよ!僕死んじゃうよ!」
「あら、私何事にも全力がモットーだったものだから。ごめんなさい」
「...なんとなく、僕ジュディスだったら普通にここの警備抜け出して普通にフレン役の人追いかけそうな気がするんだけど、気のせいかな...」
「あら、そうかしら?」
「...」
「あのー。そろそろ話し続けていいっすかー?」
「ああ!騎士団員さんごめんなさい!お待たせしましたっ!」
(ジュディス=エステル)
<シーン3>
「三人とも、怪我はないかい?一応この先は一通り魔物を退治してホーリーボトルを播いたから、安全に通れると思うよ」
「...え、えーと、ありが、とう?」
「どういたしまして。民間人を守るのも騎士...じゃない、ええと、魔狩りの剣?の役目だからね」
「疑問形かよお前。...というか、フレン、お前がカロル役か」
「そうみたいだね。...ああ、一応ハルルの街にはホーリーボトルを周囲にまいてきたから、しばらくは平気だと思う。エッグベアも先ほど退治出来たから、あとはハルルに戻ってパナシーアボトルの調合と、念のためオレンジグミを集めてきたからファーストエイドをかけ続けてみようかと」
「まぁ、なんだか私の役目がないくらいに手回しがいいわ」
「...なんか、フレンに僕の立場持っていかれると、すごく落ち込むよ」
「?そうかい?...さて、皆ハルルに向かうんだろう?道中危険だから護衛をするよ、ついてきて」
「...フレン、お前ちょっと空気読んどけ。カロルが落ち込んでるから」
「?」
(フレン=カロル)
<シーン4>
「わうっ」
「...」
「...」
「おー、ラピードがリタか」
「そうみたいだね」
「わう、わんっ!」
「あー、確かに。お前とあの小男見間違えるのはちょっと苦しいものがあるけどな」
「進行上仕方ないから、ごめんね、ラピード」
「ばうっ!」
「...」
「...」
「おーい、お前らラピードが冤罪を晴らしてやるからついて来いってさ」
「...う、うん」
「私たちにはちょっと、この『リタ』とやり取りをするのは難しいわね」
(ラピード=リタ)
<シーン5>
「あらバウル」
「ちょっと待て、ジュディ、いきなりネタばれするな。まだお前はバウルは知らない設定だ」
「ここはちゃんと、ドラゴンって言ってあげないと!」
「...困ったわねえ」
「がうっ!」
「背中に乗っているのは、リタかい?」
「そうみてぇだな。ってことは、残るはおっさんとパティとエステルか」
「それにしても...ここで確か結界魔導器壊していくはずだった気がするのだけれども。あの子、全く動く気配がないわよ?」
「...ちょっとこれは、ミスキャスじゃないか?」
「全体的にそうだと思うんだけど...確かに」
「がうっ!!」
「あたしには、可愛い可愛いブラスティアを壊すなんて、できないいいいいいいっ!!」
(リタ=ジュディス)
<シーン6>
「良いですか、カロル。そこに正座をしてください」
「え、え。うん」
「そもそも、帝国の法律とは個人が勝手に裁量を決めては立ちゆかないことになっています。ですから、例え細かいことでもちゃんと順守していかなければならないんです。もちろん、カロルにはカロルなりの理由があったことは分かっています。それでも、こうして賞金首になるだなんて...いけないことなんです、解っていますか?」
「...う、うん」
「ここはちゃんと、一晩かけてもう一度帝国憲章について覚えてもらわないといけないです。いいですかカロル、そもそも帝国の成り立ちとは...」
「え、エステルっ!多分それやってる場合じゃないから!リブガロとかラゴウとかのフラグ立っちゃってるから!」
「そうです?」
(エステル=フレン)
<シーン7>
「ちょっとセンチメンタルになったから、人生のリフレッシュにピクニックにきてみたのじゃ!すごく奇遇なのじゃ!」
「パティはおっさん役なのな」
「なんでだろう...レイヴンだとすごく胡散くさかったのに、パティになった途端にパティなら、気分転換の散歩にケーブ・モックくらいきそうだなって気になってきたよ僕」
「ふふ、羽織がとっても似合っているわね」
「ありがとうなのじゃジュディ姐!」
「女の子の一人旅は危険じゃないかい?」
「フレンは紳士なのじゃーvvうちは強いから心配ないのじゃ!」
「ま、とりあえず一緒に行くか。木から落ちたりするなよ?」
「大丈夫なのじゃ!落ちそうになったらユーリが支えてくれるのじゃろ?」
「あら、お熱いのね」
「へいへい...ほら、カロル、行くぞ」
「うん、行こっか」
(パティ=レイヴン)
<シーン8>
「おっさんは海の男なのよー♪」
「なんか、普通に似合ってるねレイヴン」
「そうね、素敵よ。おじさま」
「ジュディスちゃんもっと褒めて褒めてーvv」
「さっきまでサメの腹の中で消化されかかってたとは思えない変わり身の早さだな」
「サメごと焼いちゃえばよかったのよ、そんなおっさん」
「リタっち、ひどっ?!」
(レイヴン=パティ)
でもこの場合、さすがにソディアもカロルは刺さない気がします。
むしろ、エステルと一緒にお説教していそうです。(笑)
フレンがギルド立ちあげるミラクル、どう頑張ってもアレクセイに捕まりそうにないジュディスに、むしろ騎士団の時の服装はどうしているのか疑問になってくるパティ。
最早自由人のユーリと(でもカロルのお守役)、結構適役かもしれないエステルは割とマッチしてそうです。
おっさんは気楽に記憶喪失を楽しんでいそうです。そして、リタは絶対ブラスティアなんぞ破壊してくれない気がします。
2010/6/7up