久しぶりにヴェスペリアを起動して、私がやっていた実話を書いてみました。
以外と、コンプリートには時間がかかるんです、ね...。







星食みを打ち倒すためのネットワーク構成に時間がかかる。
そう言われてしまえば、もとよりじっとしていられないたちの人間が大半を占める一行がじっとできるわけもない。
せっかくですから、骨休めを兼ねてやりたいことをやっておいてください。にっこりと笑ったヨーデル殿下の押しの強さは地味に強い。何か手伝うことはと口を開きかけたカロルを一瞬で黙らせた。
つまりは、決戦前の自由時間ということで、一週間という時間を与えられてしまうという結果になったのである。

「難しいわよねぇ、当座、ずぅっと何かしら動きっぱなしだったんだから」
レイヴンの言葉に、皆が真剣にうんうんとうなずいた。
この場合、誰かしらの脳みそにワーカホリックとかそんな言葉が浮かんでもおかしくはなかったのだけれども、悲しいことに皆動きまわることに慣れ切ってしまっていたので、休むという概念があまりないのだ。
なにせ、試しに一日休日にして街に滞在してみたところ、ノードポリカでは戦闘狂たちが嬉々として二百人をたたきのめし、残りの面々もなんだかんだと団体戦で全員参加というオチがついた。
とある日には、帝都の下町に滞在すれば一日中大工仕事やけが人の救護、子供のおもりなどなどで一日が終わり。
結局、どの街にいても何かしらの用事やら厄介事やらを背負い込んでしまうメンツであるゆえ、休息日のくくりはもっぱら、「屋根のある場所で眠れて、道具の買い出しが可能な日」という認識にとどまる。
一番面倒くさがり代表のレイヴンはかろうじて、酒場でのんびりお酒を飲むなどのまっとうな楽しみ方をしないでもなかったけれども。
フレンは、騎士団長代理ということもあって、そもそも騎士団で仕事をしようと思っていたのだけれども、ほとんどとばっちり的に「フレン様も休息が必要です」と追い出されている現状なので、正真正銘のワーカホリックな彼もどちらかといえば手持無沙汰である。

「いっそ、いつもできないことをしてみませんか?」
はい。と元気よく手をあげたエステルに、全員の視線が集まる。
「いつもできないことって?」
カロルが首をかしげれば、エステルは品よく小首をかしげて見せてから、ふふ。と笑った。
「カロルたちがギルドの仕事をこなすもよし、お料理のレシピをコンプリートするもよし。コレクター図鑑やモンスター図鑑、ラピードのテリトリー拡大もまだ途中です」
「なるほど、確かに普段は手が回らない部分だな」
ユーリに同意をもらったことがうれしかったのだろう、はい!と元気よく返事をしたエステルは、そのままぴ、と人差し指を立てて続ける。
「それに、ウサギルドの広報のお手伝いだって途中です。一日の御休みでは全部こなすのは難しいですけれど、一週間あれば結構いろいろ出来ると思うんです」
「そうね。あたしも新しい術式考えたりしたいわ」
「私は、素材を集めて武器を新しくしたいわね」
「わふぅ」
「面白そうなのじゃ!!海のお宝探しはうちにまかせるのじゃ!!」
じっとしていろ、といわれるよりも解りやすいし楽しそうだ。
言われてみればそうだあれをまだやっていない、これが途中だったとそれぞれに思い出した面々がわいわいと口々にそれらを口にするのを、一度ユーリがなだめる。
「...まぁまず詳細は置いておいて。一週間宿にこもってるよりよっぽど解りやすいな。取り合えず書き上げてみて、担当を決めてやってみるか」
いつの間にかメモ帳を持ってきたエステルが、皆の挙げる「やりのこし」リストを丁寧な文字で記していき、カロルやパティなどはその手元を覗き込んで「あれも」「これも」と思いつくままにメモを増やしてもらっている。
「せっかくやるんだったら、やりきってみたいわね」
ジュディスがにっこりとほほ笑んだそれが、なんとなくギガントモンスターあたりを前にした時の彼女のそれと被って見えて、レイヴンがぞくりを背中を震わせる。
ジュディスの視線は思いつくままに箇条書きを記して三枚目に突入しているエステルのメモにある。...それこそ、これをこなすためには世界中を縦横無尽に駆け回らなくてはいけないだろう。
「え、ちょ、まさかこれ全部やるつもり...?」
どちらかといえば、宿でのんびり寝ていることもとくに苦痛ではないしむしろそっちのほうがいいかもしれない。とか思っていた彼だが、いかんせんメンバーは皆若かった。
そして、それ以上に行動派だった。
唯一、インドアで術式構成などにせいを出しそうなリタは、確実にエステルに乗るだろう。つまり、現時点レイヴンは孤立無援である。
「おっさん、たまには全力だしとかねぇと、なまるぞ」
ぽん、と肩を叩いてくるユーリに、レイヴンは全力で突っ込む。
「いや!普段も結構全力で戦闘とかしてるじゃない!!」
「おっさん、うっさい」
かくして、絶対零度リタによってレイヴンの反対意見は地の底に沈められ。
永遠書き連ねたエステルのメモが四枚になったところで、各自の分担が割り振られることとなったのだった。



<ユーリとフレンの場合>

「ねえユーリ」
「なんだフレン」
あんたら追憶でお金と、ギガント系から合成素材分捕ってきなさい。強いんだから。
問答無用でガチのエンドレス戦闘コースに割り振られたユーリとフレンは、これで三週目になる追憶の迷い路で、じゃりじゃりとたまったイミテーションガルドやらレアメタルやらを眺めていた。
常日頃、1ダメ装着で永遠コンボつなげて発散しているユーリはとかく楽しんでいるようで、とりあえずなんとなく、シュヴァーンやらイエガーやらアレクセイやら...フレンやらと対峙しているときがものすっごく生き生きとしているような気がする。
別に、フレンとしては訓練になるし、そもそもシュヴァーンや、今は亡きアレクセイに手合わせを願える機会がないのだからここは貴重なチャンスだと思っている。だから、この割り振りに否はない、否はないのだが。
「さすがに、毎戦闘料理作られるときついものがあるんだけど」
パーティのご飯当番はユーリなので、レシピを完全マスターして料理対決に出場する代表も自動的に一番レシピの熟練度が高いユーリになる。
ということで、ついでに料理をひたすら作り続けることも課されているわけなのだが。
正直、いくら食べる若い男性二人とはいえ、毎回毎回すきやきやらステーキやら...ちゃんちゃん焼きやら...メタボまっしぐらは遠慮したい。
「...次デザートにしとくか?」
「そういう問題じゃなくて」
ミラクル胃袋、女の敵の異名をほしいままにする我らが兄貴、ユーリ・ローウェルは実にワンダーな体をしていた。
なにせ、食べるときは食べるくせに太らず、それなのに食べないときは食べないでとくに支障がない。ダイエットする女性陣をしり目に、食べないのかじゃあ俺もらうからといって、女性陣のクレープを一人で平らげて絶対零度の視線を浴びたのはそれほど昔の話でもない。
確かに、フレンも常に鍛えているから人よりも消費カロリーは多いと思っているし食べる方ではあるけれども、それにしたって...すでに、自分の体積のどれだけの肉が自分の胃袋に消えたのか、考えたくないレベルになりつつある。
このままでは、戦闘にも支障をきたしそうだ。胃袋が重い。
「下町で、箒星の厨房の手伝いついでに作ればいいよ...もう、これ以上食べると僕は戦える気がしない」
「ふーん。ま、いいけど。...ほら、後レアメタル二個だから最低二周だ。さっさと行くぞ」
「そうだね。...ねぇ、ところでユーリ」
「ん?なんだよ」
「僕相手の時、どうしてアビシオンにわざわざ持ちかえるんだい?確か君、あれはもう攻撃力が人外になるからって普段は使わないだろう」
「ああそれか」
立ち上がって、ぱんぱんとおしりの砂を払ったユーリが、すがすがしい笑顔とともにフレンの問いに答える。
「俺が全力で遠慮なしに行ける相手なんて、お前くらいだろ」
「...何だろう、腑に落ちないのは」
「気のせいだろ?ほら、行くぞ」
何かものすごく引っかかるものを感じているフレンに、再度行くぞ。と声をかけたユーリは、むこうでじぃっとこっちを待っている追憶のフレンの方へと、心なしか浮き浮きとしながら歩きだしたのであった。


<エステルとリタの場合>

「見てくださいリタ!モンスター図鑑も、コレクター図鑑もだいぶ埋まってきました!!」
「...そ、そうね」
「アスピオの皆さんからメテオスオームも教えていただきましたし、とっても順調ですね♪」
記録マニアのエステルは、コレクター図鑑とモンスター図鑑のコンプリートを目指して世界中を動き回っていた。
見た目には、かわいらしい少女二人だが、いかんせん以下省略という理不尽に破壊的な最終兵器リタと、実のところメンバーの中で固さには定評のあるエステルである。夜盗なんぞ襲ってきた日にはあたりがクレーターになる。
遠距離、近距離、中距離、回復とそろったこのペアは、ある意味で近寄るな危険ゾーンである。
例え片方を倒しても、エステルが残れば即座にオーバーリミッツ詠唱抜きのリジェネレイト→ナイチンゲールが発動し、残りでホーリーレインの雨が降るだろう。
そして、リタが残れば言うまでもなく、以下省略メテオスオームもしくはタイダル祭りである。リスキーリングを装備して久しい彼女は、ついぞTPの残りなど気にすることがなくなってしまったある意味全身凶器である。
無邪気に喜ぶエステルの後ろには、久しぶりの獲物と思って襲いかかったはいいものの、スペクタクルズを使用した後はにっこりと隕石と光の雨のコンボで壊滅した魔物やらはぐれギルドやらが積み重なるというシュールな光景が広がる。
「あ、見てくださいリタ、これなんの花です?」
「...ちょっと見せてみなさいよ」
道端の花に感動するという、女の子らしい面を見せながら。
のちに界隈の破壊神伝説をもたらす二人は、のんびりと図鑑うめにいそしむのであった。




<カロル、パティ、ジュディスの場合>

唯一、フィエルティア号とバウルという長距離移動手段を持つ三人は、もっぱらギルドの依頼と世界中の素材を集めを担当していた。
ある程度集めては、エステル・リタ組に素材を集めて合成を頼むという手筈になっているのだけれども、意外と合成素材は数が必要になる。
探索スポットだけではどうしても足りないので、自然モンスターとの戦闘も増え、主にジュディスが嬉々として先陣を切りこんでいる。
だが、いかんせんひたすら同じ相手と切り結ぶのは飽きが来るのだろう。
「手ごたえがないわね」
心なしかつまらなさそうな顔をしたジュディスは、それでも目の前の敵に向かって軽々と跳躍をする。さすがにクリティア族、カロルには絶対にできないだろうけれども、首が痛くなるくらい見上げないといけないくらいの跳躍は人間にはないものだ。
「...仕方ないよ、追憶のほうはフレンとユーリに任せちゃったし」
おとなしく地面の敵にハンマーをふるいながら、とりあえずカロルはパティの方から飛んできた爆弾をよけた。最初はかなりあわてていたけれども、なれとは恐ろしいものだ。
時折、瀕死状態に追い込まれることがあるので、何とかしてほしいなぁというのが正直な感想だが。
「素材集め終わったら、二百人切りでも行こうかしら。なんだか余計にフラストレーションたまっちゃうわ」
身の丈よりも二倍以上も大きな魔物を軽い動きでたたき伏せるその姿は、いっそヴェルキュリアのように戦女神といった方がしっくりとくる。
なんでうちのギルド、こういう人ばっかりなんだろうという心の中のつぶやきを表に出さないほどにはカロル少年は大人であったので、そうだね。いいんじゃないかな、とだけ返しておく。
「うちは海に行きたいぞ!!マグロのごとく、海の女は航海をせねば息が詰まってしまいからの!」
一人マイペースに銃を撃ちはなつパティはパティでかなりマイペースである...自由人二人に挟まれて、ふぅと年齢らしからぬため息をついたカロルは、とりあえず目の前の敵が目当ての素材を持っていることを祈りながら、ハンマーを振り下ろすのであった。



<レイヴンとラピードの場合>

最初の方はバウル組と一緒にござ片手にマーキング対決をしていたのだが、無事ビックボスに勝利を収めたラピードを連れて、現在レイヴンはデイドン砦にいた。
道端に腰をおろして、雪道で果敢にスノーボードに挑むラピードに気のない応援を送る。
確かに動かない方が楽だけど、自分よりも動物のほうがメインであるところのこの割り振りをした皆にいろいろと問いかけたい。
(...おっさんって、犬係?)
しかも場所がデイドン砦...つまるところナンパをしようにもほとんど人など通らない。
むしろ、自分に向けられる騎士団員からの尊敬のまなざしが痛い。「おい、シュヴァーン隊長だ」などと、こそこそとどこかでいう声が聞こえてくる。
そこには、単純に尊敬の念が多分に含まれていた。
(やめておっさん若い子の純真な視線苦手なのよ。)
向こうではわんこが何度もボードから落下しながらも目標タイムを目指すべくスポコン漫画を繰り広げているのだが、いかんせんレイヴン自身は非常に暇である。
帝都かハルルにでも行かないと、酒も飲めない。
(もしかして、だからおっさんわんこ係...?)
なんだか、遠まわしに夜更かしを責められている年頃の子どものごとき扱いである。
確かに、サドンデス追憶やらルーチンワークモンスター狩りよりよっぽど楽なのだが。
(暇ねぇ...)
ごろりと草むらに横になり、腕で枕を作って昼寝の体制になれば、とたん眠気が襲ってくる。
(わんこ、がんばりなさいな)
とりあえず、心の中でラピードに声援を送って、レイヴンは夢の世界に旅立った。

このあと、無事すべてのステージをクリアしたラピードにがぶりとかまれるまでは、とりあえず平和な時間が確保されたのであった。



<おまけ>

「やりました!!」
無事さまざまなやり残しをやりきったのち、ウサギルドでうさみみ紳士用を受け取ったエステルが満面の笑みでユーリの頭にそれを乗せようと走り回ったのち、デューク戦にはウサミミ戦隊で臨んだかどうかは...彼女の努力次第である。




久しぶりにヴェスをやって、二週目に行こうとした意外とやり残しがあったので。
素材集めが一番面倒くさいです。
2010/4/25up