旦那様とデート中に思い立ったネタその2。
始終ネタ尽くしで大変楽しい思い出でした。ありがとうダーリン!!
ちなみにナチュラルにユーリはにょたですので苦手な方は回避をお願いします。
どうしてって、ユーリにバスガイドさんの制服着せたかったというそれだけなんですがあばばばば(待ちやがれ)
というわけで、現代パロで、バスガイドなユーリと運転手なおっさんです。
糖度を期待するとがっかりな産物ですごめんなさい。
そして、大切なことなので二階言います。私の趣味で兄貴ではなく姉御です。♀化苦手な方も退避を。






修学旅行のシーズンともなると、観光バスの会社はとても忙しくなる。
ある意味で掻き入れ時だ。
しかして、移動中に酒が入らないだけましといえばマシだが、大抵中学、高校生とくると中々に最近はシビアと言うか扱いづらい現状。説明は聞かないわ騒ぐわ動くわ茶々入れるわなんだで、正直疲れると言ってしまえば其れまで。
大体にして、掻き入れ時に掻き入れてこその経営といえるわけだが、サラリーマンの哀しいところはそんな時期だからといって収入は普段と変わらず、むしろ仕事の疲れで酒の回数が増えることを考えれば、出費が上向きで余り嬉しいとはいえない。
今日も今日とて、十時には中心駅に到着した修学旅行の高校生ご一行のお出迎え。修学旅行らしく、暫く観光名所をバスでめぐったあとに、昼は手作り体験と言うことだろうか、自分たちでピザを作って食べることの出来る体験所、その後はまた、バスで移動。
一応、研修旅行、という名目もかねているので、高校生達は大抵帰ってからこの、たかだか二日三日滞在した場所のレポートとやらを書かされるので、こちらもある程度は説明をしてやらなくてはならない。その土地の歴史が好きな観光客相手であれば向こうも楽しんでそれを聞いてくれるものの、学校から半ば強制的なそれを与えられる学生側にしてみれば、まぁ眠くなったり、はしゃいだりしてしまうのは仕方のないことかもしれなかった。
かくいう自分も、学生時代は結構やんちゃだったことを思い出して、このバスの運転手...現在は仕事のミーティングを終えて愛車の清掃のためにブラシを手にがすがすとタイヤをこすっている...レイヴンは、ふぅ、と息をついた。
せめて女子高の担当にして欲しかった。何が悲しゅうて、昨年共学化になったばかりの元男子校の担当になどならねばならぬのか。間違いなく、今日の夜は車内を念入りに掃除せねばなるまい。せめてガムは付けてくれるなよ、と祈るのがせいぜいで。
再び、ふぅ、とため息をついたところで、ふと、顔に影がかかった。
(あれ?今日は晴れ、よね?)
にわか雨かと、空を見上げようとしたところで
「よ、おっさん」
心臓が止まりそうになりました。
常々、自分のところのバスガイドの衣装はシンプルすぎると思っていた。
実際、ブラウスに、黒に近いグレーのベスト、そしてタイトではあるが膝上丈のベストと同系色のスカート、それにストッキングにパンプス、という色彩なにそれ美味しいの?というなんともはやな制服であったので、もうちっと華やかにならないものかと常日ごろ不満を(主に飲み会で、同業者相手に)漏らしてきたものだが。
三年前の春、レイヴンはその認識をひっくり返されたばかりであった。...この、目の前で不敵に笑う、フェロモン垂れ流しの花形バスガイドさんによって。
どれくらいフェロモンを垂れ流しているかと言うと、心の準備をせずに至近距離で覗き込まれると、一瞬目の前に星が散る程度である...これでもまだレイヴンはペアを組むことが多かったので耐性が出来ているほうだが、堅物のルブランやらはよく、このけしから姉御にからかわれて廊下やら休憩室やらで硬直しているのを見かける。
何せ、一言で言うのならばエロイのだ。
どうして、この味気のない制服をここまで、というほどに。
何せ、サイズはおいくつですかと真顔で問いたくなる大変立派なバストがぼーん、と、支給されているブラウスのボタンを二つ三つ外さなければ収まらないほどに飛び出ていて。
特注のベストで何とか其れを支えている上に、モデルですか貴方はと聞きたい長い足。細い細いくびれにあわせてスカートを選んでいるので、若干短いタイトスカートからのびる美脚は惜しげもなく晒され、ローヒールのパンプスに納まっている。
そのままCMに出られるんじゃないかというほどのつやつやとした背中まである黒髪はさらりとそのまま流され、一応パウダーくらいはしているけれどもそんなもの必要ないほどに白く綺麗な肌とあいまってまさに目の保養。
...若干、バスガイドさんのコスプレじゃないかとか、そんなことを呟きたくるなるほどの威力を、彼女は有していた。
さらには去年新たにバスガイドの仲間入りをしたジュディスと並んで、色んな意味での二強と名高い(それこそ、自社だけではなくこの地域全体の観光バス会社の間で)ユーリ・ローウェル。ぴちぴちの(死語だが、あえて)二十一歳。
今日の、レイヴンのバスに乗る、ペアのバスガイドさんでもある。
「朝から景気の悪いため息ついてんじゃねぇよ、おっさん」
「...ユーリちゃんは今日も朝から、フェロモン全開ね」
ユーリが自社の名物たるゆえんは、その容姿のみにとどまらない。
妙に漢らしい口調、ざっくばらんな性格、以前酔っ払いが相当なたちの悪さで絡んできたときなど、ひょいと腕をひねり上げて黙らせたというごり押しの腕っ節。
つまりなんというか、大分(とかそんな範囲を成層圏まですっ飛ばして)型破りなお方でありまして。
なのに、妙に人好きのする性格といいますか、敬語でもないのに今のところ苦情はゼロ(腕をひねり上げられた男性陣からも)。それどころかユーリを名指して予約を入れてくるツアーもあるのだから世の中...ああ、なんというか、と遠い目で空を眺めたくなってくることは請け合いであろうか。
さばさばとして姉御肌なこのローウェルさんは、後輩バスガイドにも良く慕われていて、今年新しく入ったまだヒヨコマークのエステリーゼお嬢様の面倒もよく見てくれている。先輩バスガイド陣にも可愛がられていて、まぁある意味で、自社のアイドルとも言えた。(性格が何処までも男前なのが悔やまれるわけだが)
「今日明日と修学旅行のガキ共だろ?ほれ、体力つけとけよ」
にっかりと笑った姉御が差し出したのは。
「...り、リポビタ○D...」
ある意味見慣れた茶色い小瓶でありました。
がくり、と片手で其れを受け取りながら、ああもしもこれで手作りのおにぎりなんかもらっちゃったらおっさん百倍は元気でるのにぃ...と心の中で血の涙を流したレイヴンの心を読んだかどうかは知らないが。
「...もう二個ぐらいランク高いほうがよかったか?」
微妙に気遣う方向を間違いまくっている彼女に、とりあえずレイヴンはヤケのようにその栄養ドリンクを喉に流し込んだのであった。



そして。
想像通りのカオスでした。
男子高校生。元気と色々があふれまくっているこの年頃に、バスの中で大人しく説明を聞いて色って言い聞かせても無駄なわけでして。
さっきからマイク片手に静かにしなさいと声を張り上げている引率の先生がかわいそうになるほど(レイヴンは運転なので、バックミラー越しにちらりとしかその様子を見ることはできないが)、ものの見事にしょっぱなから飛ばしてくださっている。
これが最終日も近くなると寝ているばかりで気楽なものだが、初日ともなるとエンジン全開、ブレーキなんぞどこかに落としてきているわけで。
(ああああああお願いだから飲み物だけは、飲み物だけはこぼさないでぇええええええっ!!)
とりあえず、ここで運転手がひとり切実な悲鳴を心の中であげていることに気づいてくれる心優しい高校生は一人たりとも乗っていないようだ。
さすがのこのはしゃぎようには、マイクを持ったままユーリも驚いている様子で、長い睫がぱしぱしと瞼の開閉に合わせて動いているのが分かる...注意を叫んでいる教師に気を使って未だ一言も話していないユーリだが、しかし彼女がそんな大人しくこの暴走集団を放置するとはレイヴンにはかけらも思えないわけで。
バイパスに入って速度を上げるためにクラッチを踏んでギアを変えつつ、あああああ備品だけは壊さないで頂戴ね(*過去二度ほど経験済み、何故か始末書書いたのはレイヴン)...とやはり祈ることしか出来ずに居た。


『おい、てめーら』
にっこり。
華のようだ、と形容するに相応しい笑顔を、その美貌に浮かべたバスガイドに、それまで騒いでいた高校生達は一様にぴたりと動きを止めた。
見惚れた、とも言える。
妙に男らしい口調なのが気になるが、そこらの芸能人やモデル顔負けの超絶美形に、目を奪われるなと言うほうがムリと言うものだ。
ばーんとしたバストにも目を奪われてしまうのは、まぁ若さゆえと言っておくことにしよう。だがそれ以上に、彼らはどこかしら圧倒される彼女のオーラから目が離せなかった。
『せっかくの旅行だ、はしゃぐのも騒ぐのもちっとばかし羽目外すのも止めやしねぇよ。ただしな』
じろり、と黒目がちの大きな目が、妖艶に細められて辺りを見回す。
そのあまりの眼力と迫力に、思わず運転手であるレイヴンと(彼は、空気に混じった彼女の本気を感じ取っただけであるが)、引率の先生ですら唾をごくりと飲んだ。
妙に、女性にしては低すぎる声が、地を這った。
『...車内に飲み物一滴こぼしてみろ...そんときゃ、腹ぁ括れよ?』
「「「「す、すいませんでしたぁあああああああああっ!!!!!!!」」」」
男子高校生たち(+何故か先生と運転手)の、野太い悲鳴のような声が、一斉に車内にこだましたのであった。


「あー、お疲れさん」
「ん?ああおっさんか、お疲れさん」
休憩室には、丁度先客でユーリが居た。
結局、あの一喝ののち、妙に彼女の男気にほれ込んだ高校生達はことごとくユーリに話しかけたがり、集合写真にまでユーリは引き込まれていた。
騒いでいても、ユーリが要所要所説明を入れるところは何があったのだと問いただしたくなるほど静まり返り、姐さん姐さんと実に楽しそうでは、あった。
...あれ修学旅行ってこんなんだっけか。
と、レイヴンが首をひねりたくなるほどには。
「はー...なんでこんなに写真取られるんだかな、俺は」
「いいじゃないの、思い出作りよ思い出作り」
一瞬、調教師もしくは猛獣使いの文字が頭の中に浮かび上がってレイヴンはその恐ろしい単語を瞬時にデリートする...有り得そうで怖い。
自身はブラックコーヒーを流し込みながら、レイヴンはとりあえず、自身の愛車を気遣ってくれた彼女への感謝をこめて、冷えたアイスココアの缶を彼女に放るのであった。



二速発進 クラッチ注意






えーと。
私が、楽しかった、です。以上。
2009/9/23up